Q
SNSやネットでは「事業を始めたらすぐ開業届を出すべき」と書いてある一方で、「売上が出てからでいい」という話も見かけます。
実際のところ開業届はどのタイミングで出すのが正解なのでしょうか?
まだ準備段階でも出していいのか、それともある程度売上が立ってから出すべきなのか迷っています。
A

開業届には「このタイミングで出さなければならない正解」はありません。
実務上は事業として始める意思が固まった時点もしくは経費を使い始めたタイミングで提出するのが最も現実的です。

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税理士・公認会計士の勝野が解説

売上が出ていなくても提出は可能で、不利になることもほとんどありません。

ただし、失業保険や扶養、社会保険との関係がある場合は注意が必要です。

ご自身の状況に合わせて出すメリットが発生するタイミングで判断することが大切です。

そもそも開業届とは何か?

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は「私はこれから個人事業として仕事をします」と税務署に知らせるための書類です。

よく「出さないと罰金がある」「必ず出さなければいけない」と思われがちですが、実際には提出しなかったからといってすぐにペナルティがあるものではありません。

法律上は事業開始から1か月以内に提出とされていますが、この期限が厳密に取り締まられることはほぼありません。

つまり、開業届は罰を避けるための書類ではなく事業者としてのスタートを整えるための書類だと考えると分かりやすいです。

売上が出ていなくても開業届は出せる?

結論から言うと問題なく出せます

開業届の提出条件に売上があること利益が出ていることは一切含まれていません。

たとえば
・開業準備のために勉強している
・パソコンやソフトを購入した
・ホームページを作っている
・SNSで発信を始めた

このような準備段階でも事業開始として扱うことが可能です。

むしろ、
「売上はまだゼロだけど、すでにお金を使い始めている」
という人ほど早めに開業届を出すメリットがあります。

開業届を早めに出すメリット

① 経費として計上できる範囲が明確になる

開業届を出すことで、
事業に関する支出を「経費」として整理しやすくなります。

特に
・パソコン
・ソフト代
・講座代
・通信費
・打ち合わせの交通費

などは、開業日を起点に説明がしやすくなります。

いつから事業として動いていたかを自分自身が整理できるのも大きなメリットです。

② 青色申告の申請がしやすくなる

節税面で大きな差が出る「青色申告」は開業届を出していないと申請できません。

青色申告をすると
・最大65万円の控除
・赤字の繰越
・家族への給与を経費にできる

など、長期的に見て大きなメリットがあります。

「今年は売上が少ないから白色でいいや」と思っていても、将来的に本気で事業を続けるつもりなら、
早めに選択肢を残しておくのは賢い判断です。

逆にすぐに出さない方がいいケース

すべての人に「今すぐ出すべき」とは言えません。

① 失業保険を受給中の場合

失業保険を受給している間に開業届を出すと、「就業している」と判断され給付が止まる可能性があります。

この場合は
・受給が終わってから
・ハローワークに事前相談してから
の判断が必須です。

② 扶養に入っている場合

配偶者の扶養に入っている方は、開業届を出すことで事業を行っている=収入見込みがあると見なされる可能性があります。

実際には
「開業届=即扶養外」
ではありませんが、健康保険の扶養判定は税務とは別基準なので注意が必要です。

「準備段階だけど出していいの?」の答え

結論としては、準備段階でも「事業としてやる意思」が固まっているなら出してOKです。

ポイントは
・趣味なのか
・事業として継続するつもりなのか

この違いです。

「いつか稼げたらいいな」ではなく
「これは仕事として育てていく」と決めた時点で開業届を出す十分な理由になります。

正解は「人によって違う」

SNSで意見が割れている理由はシンプルで人それぞれ状況が違うからです。

・会社を辞めた直後の人
・副業として始める人
・扶養に入っている人
・すでに経費が多くかかっている人

同じ答えが当てはまることはありません。

大切なのは「いつ出すべきか」ではなく「出すことで自分にどんな影響があるか」を理解することです。

迷ったらどうすればいい?

もし
・失業保険
・扶養
・社会保険
・副業規定

などが絡んでいて不安な場合は、税理士や専門家に一度相談するのが安心です。

開業届は簡単な書類ですがその後の税務や働き方に関わる重要なスタート地点でもあります。

まとめ

開業届は
「売上が出たら出すもの」でも
「すぐ出さなければ損するもの」でもありません。

あなたが「これは事業だ」と腹をくくったタイミング
それが、あなたにとっての正解のタイミングです。

焦らず、でも曖昧なままにせず、自分の状況を整理した上で判断していきましょう。